きっと彼女は笑ってる。
月の、最後の日なってしまった。やっと彼女に関して少し書ける気がしてきた。かつて一緒に芝居を作った吉田泰子さんが、遠くに旅立ってしまった。またもや憎むべき悪玉細胞の仕業らしい。体調悪いとは聞いていたがここまで進行が早いとは…。岐阜市の小ぶりな葬儀場は集まった演劇人で満員御礼。通夜の席上、お父さんの挨拶は実に素直で「これほど多くのヒトに慕われていた娘に驚くと同時に改めて娘を尊敬する」との言葉。泣けたねぇ。彼女には2000年のうちの芝居「サワ氏の仕業Ⅲ」(回文じゃん…後に「螺旋の悪意」と改題…)に客演として参加してもらい、東京、大阪公演にも同行してもらった。明るい表現の引き出しをいくつも持ち、何よりあれほどの透明感と存在感が共存する女優さんには、なかなかお目にかかれない。バリバリのアクションや立ち回りも軽々とこなす彼女の胸に、既に心臓のペースメーカーが埋まっている事を知ったのも、随分昔の話だ。「そりゃはせさん、命がけですよ。役者も恋も」…なんてね。アルコールの器を片手に、からからと笑っていたよね。旅公演の合宿所でさ。とっくの昔に「吹っ切った」ようなカラリとした表現。うじうじしないでドーンと勝負して、スコーンと落ち込んで、しこたま飲んで、翌日ケロっとしていたよね。きっと吉田泰子の魅力でもって死神さんすら取り込んで、一緒に飲んで誤魔化してさ、結構長生きすると思っていたんだけどね…。だって、心底もう一回やる気だったんだから。今だから言うけどさ、あのユニットの件だって、てっきりお前さんがやると思っててさ、出来ないって知ってからもアンタにアテガキした部分もあったんだからね。それを客で観た後で、「やりたかったなぁ」なんて、サラリと言ってくれちゃってさ。悔しいから「じゃあ絶対、も一回やるからね。ひーひー言うような、すんごい役柄書くからね」と約していた。それすらもすんげえ昔かぁ…。祭壇に飾られた遺影がまた、たまんない笑顔の、しかもウエディングっぽい服装。アレを選んだんだよね、ご家族は…。お棺の中のお顔も拝見したよ。穏やかだったけど、ほんの少し悔しそうにも見えてしまった。違うよね。悔しそうに見えるのは、残されたこっちが悔しいからだよね…。悪いけど、泰子さぁ。ホント悪いけど…その内に君で一本書かせてもらうぜ。アンタへの未練を底力にさ。もし供養なんてモノがあるとしたら、それしか出来ないからね。因果な商売なんですよ…もちろん四十九日は待ちますけどね。いや、これまた違うか…四十九日を待たなくてもね、きっと彼女は……
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